2時間22分22秒

課題の論文を読んでいた夕方、元教え子からメールが来た。
少し深刻な悩みを抱えていたらしく、返信した後に電話がかかってきた。
その子は、私が採用2年目で子どもたちを目で殺していた時代の4年生の時に担任した。
この4月から高校に進学しバスケ部に入ったらしいのだが、もともとバレーをやっていたので、バスケのことは初心者であるその子は、少しでもうまくなろうと練習に励んだ結果、「ひろこ」になったそうだ。

説明しよう…「ひろこ」とは「疲労骨折」のことで私のいた高校の野球部では、「ひろこ」と呼んでいた。

少しずつうまくなり始めていた矢先のけがにより、安静を余儀なくされた。周囲にはその子と同様に高校に入ってバスケを始めた子も多くいたようで、自分が怪我をして動けない間にどんどん上達する周囲にあせり、それ以外のことも重なり、自分ではにっちもさっちもいかなくなったということだった。それ自体は大したことはないのかもしれないが、本人にしてみると非常に悩ましいようだった。
話を聞くうちに少し落ち着いてきたようだったので、少しくだらない話をと思い当時の昔話を始めたら、それが終わらない終わらない…。

「あの時の先生は、本当に怒っていたよね〜。その時は泣いてばかりだったよ。」と話していた。当時の自分のあまりの未熟さに少し胸が痛くなる思いを感じながらも楽しく話した。

すっかり話し込んでしまったが、その子も明日を笑顔で迎えられそうだと話してくれたので安心した。

これからも悩むことは数限りなくやってくるが、悩みながらも一歩ずつ進んでいってほしいと思う。

電話を切ると、何と通話時間が「2時間22分22秒」であった。久しぶりの長電話だったが時間の長さを感じさせなかった。
「たまにはこういう日があってもいいよな。」と自分に言い聞かせて、帰るとしよう…。